フランシスの指は、冷たい。

 細く長く綺麗なその指先は、いつも触れてから知るのだけれど、冷たい。

 まるでガラス細工みたいなそれが、私の頬を滑る。

 どうしてフランシスの指は、冷たいのだろう。

 と、考えながらぼんやり彼の顔を見つめていると、不思議そうな青い瞳に覗き込まれた。


 「?どうした?」

 「ううん、何でもないよ。ちょっと考え事、してた。」

 「へぇ。こんな素敵なお兄さんが目の前に居るのに、考え事?」


 そう言ってフランシスはふざけて、私のおでこへキスをひとつ落とす。

 ぐんと近くなった綺麗な青色を見つめて、この瞳も冷たいのかななんて思った。

 すると今度は、瞼に落ちてくるキス。

 私は思わず目を閉じて、間近に響くくすくす笑いだけを聞いていた。

 するりと滑る冷たい指は、頬から顎へ。


 「どうして、だろうね。」

 「ん?何が?」

 「フランシスの指は、冷たい。」


 会話の間にも、おでこと瞼と頬に降って来る絶え間ないキス。

 
 「そう?そんなに冷たいか?」

 「冷たいよ、いつも冷たい。」


 別に嫌じゃないけど、と小さく付け足すと「お兄さんは心が温かいから。」なんて軽口が返って来た。

 顎に掛けられた手に力が入れられて、自然とくっと上を向かされる。

 キスが止まった事にゆっくり目を開けたら、それを待ってたかの様にフランシスが至近距離でにこりと笑った。

 細められる、青い色。

 冷たい指先が私の唇をゆるりと撫でて。

 途端に私の心臓は音を立てて、鼓動を早く刻み始める。

 頬には熱が集まって、きっと色は真っ赤に違いない。

 いつも、そうだ。いつもいつも。

 フランシスの指は冷たいのに、触れられたそこからはじわりと熱が広がる。

 いつも私はその熱に、浮かされる。


 「変、なの。フランシスの指は冷たいのに、熱い。」


 意味不明な言葉を呟いた私を、フランシスは見つめて、そして笑って。 


 「そりゃ大変だ。」


 そう言って私の唇に、キスを落とした。

 冷たい指は、私の熱い唇の傍に置いたままで。 




























 三秒後、指先がどう動くかは未だ知れず

 (もしかしたら冷たいこの指先に、焼き尽くされてしまうのかも知れない。)









































 
 素敵な企画「もっと私を愛してよ!」さまへ捧げます!
 
 お兄さんはああ見えて、意外に指が冷たいとどきっとしそうだな、なんて。

 素敵な企画の主催者さま、読者さま、そしていつも大人の魅力なフランシス兄ちゃんに愛を込めて!
 
                                                  「off」 雫

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